あるSEのつぶやき・改

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プロジェクト管理の名著『ゆとりの法則』を再読した感想


ゆとりの法則 - 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解』は、2001年に出版されたトム・デマルコの名著ですが、久しぶりにこの書籍を再読してみて、20年近くたった今でもその内容はあせることなく教訓に富んでいるなと感心しました。

みなさんの職場では、忙しくて仕方がなく、他になにかをやる余裕がないような人はいないでしょうか?もしかすると、1人ではなくみんながそういう状況かもしれません。もしそうなら、この書籍を読む価値があります。

現代は効率化重視の時代でありスピードを求められる時代です。そんな時代に「ゆとり」の重要性を20年近く前に説いたこの書籍は名著といっても過言ではないでしょう。

そもそも「効率化」とはなんでしょう?

「効率化」とは、人が仕事のない時間をなくして、絶えず忙しく仕事をしている状況を作り出すことと言ってもよいでしょう。効率化することにより、仕事をする人を減らすことができ、コスト削減につながります。

しかし本当にこれはコスト削減なのでしょうか。長期的に見ると効率化によるコスト削減は、将来的な利益を減らすことになると本書では述べています。1円を節約すれば1円の利益になるとよく言いますが、「1円を節約しても、1円の利益にはならない」のです。それは、未来の投資を削減していることになるからです。

「ゆとり」は効率化と真っ向から対立するものですが、組織には必ず必要なものです。

現代は効率化、スピードの時代であると同時に、変化の激しい時代でもあります。変化の激しい時代には、組織内で変化と再生を起こす必要があります。そのためには組織にゆとりが必要です。変化と再生は中間層から生まれますが、効率化重視した組織は中間層を削減してしまっているためにゆとりがなくなってしまっていて将来は暗いと本書は述べます。

本当に仕事を早くするには、時間かコストのどちらかを選択する必要があります。

  • 時間を最小限に抑える
  • コストを最小限に抑える

しかし、両者は相反するため、どちらか一方しか選択できないのに、現代経営では両方を選択しようとします。

そして、プレッシャーをかければ仕事が早く終わるという考え方以下の法則が述べているように間違っています。

人間は時間的なプレッシャーをいくらかけられても、速くは考えられない

− ティム・リスター

興味深いと思った内容が「自動化のパラドックス」です。

自動化を導入する際には、仕事の中でも特に機械的な要素を選ぶ。(中略)新たに自動化を導入すると、人間がすべき仕事の全体量は減るが、残った仕事はむずかしくなる。これが自動化のパラドックスである。仕事を楽にするのではなくむずかしくする。

自動化により楽になるかと思えば、仕事自体はむずかしくなるというのはまさにパラドックス。これは最近のRPAの導入による自動化にも通じる考えでしょう。

変化を起こすためには、リーダーは関係者に信頼を得る必要があるけれども、新任のリーダーにはそれが難しいですね。そのために、以下のような方法を提示しています。

いつも信頼に足ることが表示されるより、少しに信頼を与えなさい。

変化を起こすには再生が必要で、それには中間層があることが必須条件だと本書ではまとめています。ゆとりを取り入れ、安全性を高め、管理者の孤立を防ぐ。これが中間層のよる再生の処方箋だとのこと。

簡単にできるようで、組織の文化にも左右されるため、実現はかなり困難でしょうが、できなければ市場から撤退することになるため、どの組織でも対応する必要がありますね。

他にもいろいろな示唆に富んだ内容が書かれていますので、興味を持った方は本書を手にとってみてはいかがでしょうか。